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4章:くもの糸
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4章:くもの糸
僕が小学校低学年の頃の話だ。
学校も終わり、僕は一人帰り道を歩いていた。そして、ふとした何気ない思い付きから、今日は別のルートで家まで帰ろう、と決めた。
いつもは使わない、人通りの少ない山沿いの道。家までは大分遠回りだけど、僕は随分楽しげに歩いていた記憶がある。昔は、そういう無意味なことに楽しさを見い出す子供だったのだ。
さて、そんないつもと違う帰り道。僕はふと、ある不思議なものを見つけた。車一台分の幅しかない道、進行方向に対して左は林で、右は小さな池だったのだけど。その右の池から、何やら白く細いものが、空に向かって伸びていた。
その時の僕が『空に向かって伸びている』と思ったのは、単純な話、空に何にもなかったからだ。木々の枝が伸びているわけじゃない。飛行機が、鳥が飛んでいるわけでもない。
最初、僕は煙かな、と思った。でも水のある池から煙というのもおかしい。別に水面に浮かぶ水草が燃えているわけでもないようだった。
ガードレールに腕を乗せ、僕はその白い細い物体をじっと見つめた。
それは、どうやら、糸の様だった。白い糸だ。
僕は白い糸を辿って空を見上げた。白い糸は、上空に行けばいくほど、空に点在していた雲と同化して見えなくなる。
天へと伸びる糸。
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