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10章:焼き肉
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「そう、そこなんだよ。リコはさ、バックの値段でお仕事してるでしょ、こんなもんでしょって。でも、客はその約二倍を店に払ってるわけ。このカルビが一皿1500円なのと一緒なんだよ。頼んじゃったから仕方ないけど、納得はいかないよね、って。例えば一皿880円なら妥当かもしれないけど、次は他の店でもいいかなってなる。でも、もし特上カルビ並の超ウマイ肉がこの値段で出てきたら、次もここでこの肉食べようって思うじゃん?質の良さが指名につながるんだよ。」
おそらく、頭の悪い私にもわかるように精一杯考えてくれた黒沢の例え話。
当時の日記(殴り書きのようなものだが)には、こう記してあった。
【一皿880円のカルビじゃダメ
ものの対価
いい肉になる
特上カルビになるにはどうしたらいいのかが課題
お得感が大事
安く見られるな】
今思うとずいぶん抽象的な説明ではあるが、バック分でしか仕事を考えてないという彼の言葉はまさに図星で、お金を稼ぐことについて考えるきっかけになった一日だった。
まぁ頑張れよ、そう肩を叩いて黒沢は帰って行った。
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風俗嬢の肖像 ©著者:奈緒
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