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1章:捕獲
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男「ハイハイ、早く慣れてねー。
さ、手ぇどけて。メシ置くよ」
亜「………。」
(カタッ)
男は取り乱す亜美を軽くあしらい、
左手の手錠を外した。
目の前に置かれ、用意された料理は
デミグラスハンバーグとクラムチャウダーにご飯のセット。
湯気を立たせて美味しそうな薫りが漂い、
思いのほかまともな食事を
出された事に対する意外性と驚きに、
亜美は動揺を隠せずに居た。
男「要らないなら、食べなくていーケド」
亜「いえ…あの…スミマセン…戴きます…」
男「学校終わってからなんも
喰って無かったんじゃない?
お腹空いてるでしょ。
さっきビービー泣いてる時、
腹の音も鳴ってたよ。ハハッ……可愛いね君」
申し訳なさそうに食事に手をつける亜美。
(カチャリ…カチャ…)
亜「……美味しいです……」
男「そう?」
男の言う通り、極度の緊張が続いて
意識しなかったが、学校の昼休みの
弁当を最後に、もう長時間食事を
取っていなかった事を思い出す。
いつも携帯で時間を確認する為、
今奪われているせいで確認こそできないが、
本来ならもうとっくに母親の作った食事を
父親と三人で取っている時間を
過ぎているのだろう。
そう思うと、亜美は胸が痛んだ。
(カチャリ…)
亜「ご馳走様でした…
ありがとうございます」
男「お粗末様」
亜「あの…」
男「何かな」
亜「ト、トイレに行かせて戴いていいですか…?」
男「いーよ」
(カチャリ)
そう言うと男は亜美の両手を後ろに回し、
手錠を掛け、次に両足の手錠を外した。
男「おいで」
亜「ハィ……」
(カチャ)
亜美が男の後を付いて歩き、
テーブルの部屋から出て最寄りのドアの
前に着くと、男は亜美の手錠を外した。
男「ここがトイレ」
(ジャーッ…)
亜美はそそくさと用を済ませ、
トイレから出て来た。
力づくではあるが、再度両手を
後ろに縛られ部屋に戻り、また
両足と左手を椅子に繋がれた。
男「手は洗った?トイレん中に
洗面台あったでしょ」
亜美は顔を赤らめ
亜「洗いましたっ!!
」
男「ハハッ、ゴメンね」
少し、和やかな空気になった事と。
最低限度の融通を効かせてもらえる
扱いに対し、亜美は
微かな安堵を覚え始めた。
(♪♪♪)
男「ん?」
亜「!」
亜美の携帯が鳴っている。
男は携帯を亜美の手元にゆっくり、置いた。
男「電話、出ていーよ」
亜「!?」
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