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18章:狂気
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アヤカは床に転がっているナイフを見ている。
又ナイフを掴んだ。
ナイフの刃を自分の左手首の上にのせた。
左手首の内側にナイフを押しつけた。
手首にナイフがめり込んでいる。
そしてすばやく引き抜いた。
アヤカの左手首は深く切れ血が溢れでてくる。
アヤカは血が滴り落ちる手を竜次の顔に差し伸べた。
竜次を見つめている。
アヤカの目はうつろな目に変わっていた。
アヤカの右手は動かなくなった竜次の首にナイフの刃をあてている。
ゆっくりとナイフを左から右に動かした。
竜次の首から血がにじみ出てきた。
アヤカは竜次に静かに語りかけた。
「竜ちゃん、待っててね、私もすぐ行くからね」
そう言ったあとアヤカはナイフを自分の首に近づける。
そして首の頸動脈を思いっきり切り裂いた。
アヤカの首から大量の血が激しく吹き上がり竜次の体を赤く染める。
アヤカは竜次に抱きつくように倒れこんだ。
アヤカはだんだん力が抜けていく体で竜次に唇を合わせようとしていた。
竜次の顔はアヤカの首から吹き出た血で真っ赤に染まっている。
アヤカの意識が遠のいていく。
アヤカは竜次に抱きつきながら、菊水の顔が脳裏に浮かぶ。
「菊水ちゃん、ごめんね…、でも竜ちゃんはいないから安心してね、菊水ちゃんとずっと一緒に過ごしたかった…菊水ちゃん、大好きよ、大好きよ」
アヤカは竜次に抱きつきながら、菊水の事を思い浮かべている。
そして静かに目を閉じた。
アヤカの目から大粒の涙が竜次の顔に滴り落ちた。
アヤカの最後の涙だった。
出しっぱなしのシャワーが、アヤカと竜次の血を洗い流すかのように、いつまでも降り注がれていた。
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