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21章:ジゴロ
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「え?平和島?競艇でも行くんですか?」
「あ、それもいいわね。でも私ね昨日新宿で結構擦ったの‥今月はあんまり運ないのかも」
こいつギャンブルもするのか。視界の端で太陽光を照り返す峰の鞄のギラギラが俺を段々とげんなりさせていった。
「平和島はね、日本を離れるまで住んでた場所なの‥。本当は帰国したら行ってみたいなぁって思ってたんだけど」
確か前に結婚を機に峰は中国に渡ったと言っていた、ということは平和島に住んでた時はまだ若かったんだろうな‥、運転しながら漠然とそんなことを考えた。その頃はきっとまだ整形してなかったんだろう、いやしてたのかな。
「平太くん‥、わたし今日ね、下着つけてない」
「ん‥‥えっ?!!!」
暖房がちょっと効きすぎて、気だるかった空気が一気に凍り付いた。自分の耳を疑ったというよりも早く、一目散にこの場から逃げ出したくなった。しかし路肩に停車するのも何だか怖い。頭が真っ白だったが、俺は何とか走行を続ける事にした。
この女は‥一体なんだ?俺は峰が下着をつけてないと言ったことに驚いている訳ではなかった。むしろ、今日こそキメるつもりだろうと思っていたから、待ち合わせてホテルに連行されると思いきや普通にドライブをしようと相手から提案してきた事に驚いたくらいだった。
「助手席だから見えちゃうかな、隣の車から‥」
俺だってこんな仕事をしていたって超能力者なわけじゃない。100%相手の気持ちを察することは無理に等しい。だけど普通の人間は次に発する自分の言葉の前に少なからず雰囲気を起こしてから喋るものだ。
「もしかして、峰さんはMなんですか?」
だけど、峰はまるで機械の様にポンポンと喋る。こちらに予測させる動きを一切取らない。そんな事が出来る人間がこの世の中に居ることに驚いていた。
「平太くんは、そういう性癖とかあるの?」
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