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21章:ジゴロ
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「いや、俺はただ弁護士になって金も稼ぎたいですけど、それよりも‥」
「自分の両親の工場が不当で潰れた時に、助けてくれる人が誰も居なかった‥?」
ぐさっと心臓をえぐるようにその言葉は鋭く俺に突き刺さった。自分で吐露した事も無かった、当時の悔しさがその言葉に触発されて俺は峰を睨み殺した、何処か冷静な自分が一瞬にして自分の形相が変わっている事を暗示した。
「俺に、どうしろって言うんですか?もうはっきり言って下さい」
「‥‥」
しばらく沈黙が続いた。しかし、車内に充満する張りつめた空気を作っているのは俺の全身から漂う殺気に近い怒りだけで、一方の峰の方は相変わらず淡々として俺を眺めているだけだった。
「あのね‥」
「すいません、帰ります。たぶん峰さんに提示して頂いたところで、到底自分にはご期待に応えられそうな気がしません」
「あのねぇ‥」
相手はまだ何か言い足そうに口ごもったが俺は構わず後部座席から鞄を取ると中を漁って腕時計を探し出した。
「これ、何て言っていいのか‥。でも峰さんのご要望にお力添え出来ないとなったら、頂けませんので‥すいません」
そう言って時計を相手に差し出した所で、もの凄い勢いでそれを跳ね返された。
あまりの早さに咄嗟に対処できるはずもなく、バシっと手と手が激しくぶつかり合った音がした次の瞬間に腕時計は無惨にもサイドブレーキに当たり、峰の座る助手席の下に落下していった。
「いい加減にしなさい」
はっと顔を上げると、相変わらずピンと張った肌にぎょろりとした目の峰がこちらを見据えていた。おそらく整形のせいなのだろう、その表情は一mだって変わっていなかったが‥声色は怒っていた。
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