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21章:ジゴロ
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「‥いいけど、わたし使い道の解らない事にお金出すのって嫌なの、そのお金どうするつもり?」
助手席で眠たそうな声を出して峰はふんぞり返った。こうした如何にも金にもの言わせて偉そうな態度を取る様な奴を世間一般的には軽蔑するだろうが、目の前の整形依存女がやると不思議と何の呵責も無く受け入れられた。平たく言えば未確認生命物体として何でも許してしまえるのだ。
「大学院のお金は、もう先客が援助してくれてるんじゃないの?」
峰には信用が置けないと思った俺は彼女には一切の事を話してなかったが、俺が誰かに援助を受けているのは言わなくても客であれば誰でも想像内の事だろう。
「実家に借金があるんです、もちろん父親はまだ働いてますが‥たぶん普通のとこで借りたみたいじゃなさそうなので‥」
「そうなの?何処の地下銀行なんだろう?闇金?知ってたら話してみてくれる?」
一瞬脳裏でそれもアリかなと思った。峰の息のかかった所ならもっと上手く更新してもらうことも出来るだろう。しかし俺は頭を振ってその考えを排除した。
「いや、それはいいんです。借りた物はきちんと返したいので」
自分の勉強している範囲内の事でもあったが、俺は美都さんを見ていて個人情報を守る事が如何に大切で注意すべき問題なのかを学んだ。彼女は俺と個人契約だけすればお店に払う毎度の紹介料数万円を浮かせる事が出来るのにそうはしなかった。それは店側が知り得ている美都さんの些細な個人情報を守る為だった。
「へー、偉いのね。その借金ていくらくらいあるの?」
「たぶん、数千‥億は無いと思うんですけど」
「会社が潰れたの?」
「そうですね、そんな大きな会社ってわけじゃないんですけど、工場なので」
峰に実家の住所を知られて良い事がある分けなかった。そうで無くとも俺は未だに彼女を自分の客にしてしまっていいのか悩んでいた。しかし俺みたいな半端にこの世界に足を踏み入れている人間が、人脈と金の上にあぐらかいて座っている峰の様な得体の知れない人間と関わってはいけないと、頭の何処かでは解っていた。
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