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20章:蝶々結び
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「例えば?」
「まずイケメンは仕事できないって思われてるし、女性からも男性からも調子のってるって思われる様なもんなのよ。あと男性のやっかみね、男のいじめって女よりも卑劣なのよ‥」
「調子に乗らずに頑張るよ、でもなんか怖いなぁ」
「怖いのよ、自分が出世する毎に敵は増えるしね‥。だから結婚して早く安息の場所を作ってね、人の評価だけで自分の存在価値を見出してたらボロボロになるから」
「家族に自分の存在価値を置くってこと?」
「ま、結婚してない私が言うのも変なんだけどさ。私の上司や同僚でも子だくさんの人って、揃いも揃って皆幸せそうなのよ」
「心配してくれてるの?」
そう言うと美都さんは驚くように目を丸くして、ちょっと怒ったように短くため息をついた。
「当たり前でしょ。へーちゃんはジゴロって周りに勘違い受け易いから、そんな周りの評価を気にしないで家族作って味方を作るのよ、拠り所をってこと!」
俺に援助しながらも、『へーちゃんはジゴロって勘違いされ易い』と言う美都さんが最強の味方なんじゃないかと、そんな言葉が喉元までせり上がってきたが、なんとか心の中だけでとどめて置いた。あまり彼女を縛ってしまっても可哀想だと思ったからだ。
「社会に出てからの心配までしてくれてありがとう」
やっぱり美都さんは『信頼できるお姉さん』のポジションで俺に接してくれているんだね‥。
時計の針は2時を差していた、峰との約束まで後12時間を切ったか‥。あの腕時計をどうしようかと思いを巡らせそうになったが、目の前の美都さんがそうさせなかった。抱きついてきた力はあまりにも優しすぎて、俺にリードの隙を一切与えなかった。
「寝よう」
優しく微笑むその笑顔は俺の事を救ってくれる女神そのものなのに、同時に俺を何処までも甘やかして鈍感にさせてゆく‥。
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