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15章:エリー別離 Ⅱ
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15章:エリー別離 Ⅱ
「もしかして……あなた、絵理奈の“仕事”を知ってたの?」
陽治が真子の声に、悲痛な顔を上げた。
「ーー知っていても知っていなくても……結局、こうなってしまった……」
ーーーーーー
〜自然の背後に隠れて居る〜
僕等が藪のかげを通つたとき
まつくらの地面におよいでゐる
およおよとする象像(かたみ)をみた
僕等は月の影をみたのだ。
僕等が草叢(そうそう)をすぎたとき
さびしい葉ずれの隙間から鳴る
そわそわといふ小笛をきいた。
僕等は風の声をみたのだ。
僕等はたよりない子供だから
僕等のあはれな感触では
わづかな現はれた物しか見えはしない。
僕等は遙かの丘の向うで
ひろびろとした自然に住んでる
かくれた万象の密語をきき
見えない生き物の動作をかんじた。
僕等は電光の森かげから
夕闇のくる地平の方から
烟の淡じろい影のやうで
しだいにちかづく巨像をおぼえた
なにかの妖しい相貌(すがた)に見える
魔物の迫れる恐れをかんじた。
おとなの知らない希有(けう)の言葉で
自然は僕等をおびやかした
僕等は葦のやうにふるへながら
さびしい曠野に泣きさけんだ。
「お母ああさん! お母ああさん!」
※「萩原朔太郎」(はぎわら さくたろう)1886-1942.詩人
詩集『青猫』より
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愛ヲ乞ウーー遺された心 ©著者:七斗
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