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12章:真子。そしてエリ。
「……あなたによく似た男を知ってるよ」
カウンター越しに、真子が日本酒を注いだ。
「同じ瞳の色をしている」
ーーーーーー
〜 殺人事件 〜
とほい(遠い)空でぴすとるが鳴る。
またぴすとるが鳴る。
ああ私の探偵は玻璃の衣裳をきて、
こひびと(恋人)の窓からしのびこむ、
床は晶玉、
ゆびとゆびとのあひだ(間)から、
まつさお(真っ青)の血がながれてゐる、
かなしい女の屍體(しろう)のうえで、
つめたいきりぎりすが鳴いてゐる。
しもつき上旬(はじめ)のある朝、
探偵は玻璃の衣裳をきて、
街の十字巷路(よつつじ)を曲つた。
十字巷路に秋のふんすゐ、
はやひとり探偵はうれひ(うれい)をかんず。
みよ、遠いさびしい大理石の歩道を、
曲者(くせもの)はいつさん(一散)にすべつてゆく。
「萩原朔太郎」(はぎわら さくたろう)1886-1942.詩人
『月に吠える』より
※転載ー(著作権は1983年に消滅)
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愛ヲ乞ウーー遺された心 ©著者:七斗
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