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6章:郁子ー憧憬(どうけい)
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◇◇◇
眼が醒めると、郁子が心配そうにタオルで俺の額を冷やしていた。
副作用である、体温コントロール機能の喪失。反射的に指で脈を図った。少し乱れている。高体温になり、額から汗が流れ落ちる。
「アキラくんに聞いた。私が強く問い詰めたの。貴章さん、もうこんなこと止めて……私がーー私が薬の代わりになるよ?」
郁子と付き合って三ヶ月になろうとしていた。
誠心誠意、尽くす郁子に、『本当に彼女と一緒になったら、幸せを思い出せるのかもしれない』ふとそう思った。
けれどまた黒い感情が、ちらりと顔を見せる。
(どのみち、みんな去って行くんだろう?)
額のタオルを換えようとする郁子の手を強引に引き寄せて唇を吸った……。
「薬の代わりになってくれんの? なぁ」
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愛ヲ乞ウーー遺された心 ©著者:七斗
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