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4章:郁子
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◇◇◇
「貴章! 郁子が泣きながら寮の外で待ってるよ。どうしたんだよ?」
アキラがチャイムを鳴らし、部屋のドアを叩く。それすら健太の写真から浮き出た亡霊に思えて耳を押さえた。
「放っておいてくれ…………頼むから一人にしてくれ……」
タオルケットを頭から被り、破れた心を繕おうと必死で喘いだ。
諦めたアキラの足音が遠ざかる。
(少しでも普通の生活をしようとした俺がバカだった……もう前の自分には戻れないんだ)
それから貴章は、仕事以外では郁子と距離を置く。
置き去りにしたことを謝らなければーーとは思っていたが、またそれがきっかけで郁子と時間を共有することになるのが億劫だった。
そして何より、いつ鎌首をもたげるかも知れない黒い感情を、コントロールする自信が無かったのだ。
郁子はそれでもすがるような眼をして毎日、貴章を見ていた。
新聞屋に就職して半年……7月も後数日を残すのみとなったその日。
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愛ヲ乞ウーー遺された心 ©著者:七斗
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