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4章:郁子 (2/15)

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貴章が沙也加を真っ直ぐに愛したように、沙也加も健太を愛していた。健太とのメールには全て保存がかけられ、出会った当初の文面から全て残っていたから。


(俺たちの気持ちは偽りは無かった。けれど、健太も同様に愛していたーー沙也加は全てのけじめを付けて終わらせたかったのだろう。そしてそれは消去される前に遮断されてしまった)


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【今までどんな仕事をしていたの?】


【そうだな。いろいろやったけど、母親の男がやってる小さなペンキ屋で働くのが嫌になってーー中学の時からいたから。で、他のペンキ屋で少し働いたけど親方と合わなくて……バックれて新聞屋に勤めた。寮付きだったからね。20歳の時】


【新聞屋さん? 朝早いお仕事ね】


【朝どころか……夕刊もあるよ。丸一日、座る暇も無かったな】

ーーーーーー


一年以上に渡る、膨大な量のメール文章を統合的に読む。貴章は健太の生い立ちを朧げにつかんだ。



ーー健太が幼い頃に父親が失踪し、長男である彼は弟の面倒を見ながら成長した。そして中学もろくに行かせてもらえずに、母親の彼である男の塗装屋で働いて、家計を支えたのだ。



(健太の人生を追おう。それから何か、あいつを追い込むヒントが見つかるかも知れない)

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愛ヲ乞ウーー遺された心 ©著者:七斗

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