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3章:流転 (2/7)

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沙也加の葬儀は、近しい親族のみの家族葬で執り行われた。


刑事がーー「残念ながら、マスコミが飛びつく事件になるでしょう……目立たぬよう、しめやかにお送りください」と助言をしてくれたからである。


俺は、生花の祭壇を沙也加に捧げた。実家の一室で、清楚で純真だった、生前の彼女を彷彿とさせる暖色系の花を供える。


棺に眠る沙也加は、美しく死化粧が施され、今にも眼を開けてあのーーたおやかな微笑みを、俺に投げかけてくれそうだった。



実家前にはマスコミが多数集結し、野次馬や近隣の人々も物見高く集まる。


出入りをするたびに、俺は無神経なマイクを向けられ、奇異の眼の中で、ひそひそと侮蔑の囁きを耳にした。



『可哀想にねぇ、出会い系サイトですって……』


『え? あの真面目な沙也ちゃんが……? 可哀想にねぇ』


『医者の婚約者と二股をかけてたんだってよ……女は怖いなぁ…………』


『優秀なお嬢さんだったのにねぇ……可哀想だこと』


『大人しいふりして、好きモノだったんだ……ふふふ』




耳を塞ぎ、恫喝(どうかつ)を抑えるーーお前たちに何が解る! 無念に命を奪われた、沙也加の何が解ると言うんだ!!



絶大な暴力を振り回す“言葉たち”に、俺は骨の髄まで破壊された。


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愛ヲ乞ウーー遺された心 ©著者:七斗

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