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2章:彷徨い流離う。 (2/16)

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理由を問いただしても、母親は泣くばかりで詳細はつかめずーーとにかく医局長に理由を話して、すぐに家に戻った。


沙也加の両親は現場近くの大学病院にいるという。犯罪性のある死体や、その疑いのある死体は、死因などを究明するために司法解剖が行われるからだ。

そして高度な専門知識を持つ、法医学者の手で執行される。


俺は車を飛ばして病院へと向かう。まだ信じることができない。


ーー何かの間違いだ、間違いだ、重症であれども、息さえあってくれれば俺が治療する、俺が付きっきりで沙也加を診療する。
俺がーー


強く握ったハンドルが、ぎりりと音を立ててしなった。



連絡をしておいたので、病院の入口で沙也加のお父さんが待っていてくれた。顔色は蒼くうなだれ、虚ろな眼を俺に向ける。


「ーー貴章くん。すまないね……」


その顔は、“本当に沙也加が死んだ”と物語っている。


「お義父さん……何かの間違いでは?……本当に沙也ちゃんでしたか?」


ふっと揺らめき身体が傾く父親を、俺は腕で受け止めた。小刻みに小刻みに震えている。


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愛ヲ乞ウーー遺された心 ©著者:七斗

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