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7章:決断 (2/10)

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水野は車で実家まで迎えに来てくれた。狭い街だ。両親も彼を知っている。普通のサラリーマン家庭に育った彼は、子どもの頃から理数系が好きで、医者への道を目指したという。

玄関まで挨拶に出た母とも一言三言交わし、私は水野のBMW X3の助手席に乗った。


「いい車買ったじゃない」

私は快適な座り心地の、皮のシートに身をゆだねる。


「いやぁ、医科大学は6年制でそれから研修医だろ。長かったよー。やっとまともに大学の医局に入れたけれど、忙しくてさ。遊びに行く暇も無くて、車ぐらいって思ってーーしゃぶしゃぶの個室を予約しといたけどいい?」

「ほんとに? 私、大好きだよ。久しぶりだぁ! え? 水野先生のおごり? いっぱい食べちゃおっと」


水野は眩しそうに私を見た。


「ほんと変わって無いね。俺、高校の時に、沙也ちゃんに憧れてたんだよーー頭もいいし、ピアノも上手だし……」

「嘘ばっかし! 水野くんこそサッカー部でモテモテだったじゃない。彼女も居たよね? ほら、音楽部の……」


水野がハンドルをきゅっと握り直す。


「それはーー沙也ちゃんが振り向いてくれなかったから……」


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逃亡犯ー黎明(前編) ©著者:七斗

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