5章:崩れ落ちる偶像 (2/8)

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俺は、今までのツテを頼って、塗装業の職人仲間達に連絡を取った。大小に関わらず、“どんな現場でも頑張って仕事をするので”と頭を下げたのだ。

沙也加と結婚するならば、堅い仕事の会社勤めに職を替えた方が良いのだろうが、今は就職難だ。取り敢えず金を貯めねばならぬ。


ーー二人で住む部屋も借りなければ。子どもだって出来るかも知れない。もし、そうなったら。

俺は、裕二や洋介の母親みたいに、懸命に子どもを育てるんだ。

二人から貰った温(ぬく)みに、身を委ねていた。


……夢は膨らんでいく。


しばらくして、一番付き合いの長い職人仲間から連絡があった。


◇◇◇

「沙也加、仕事決まったよ。とりあえず短期だけど金沢に行ってくる」


X'masイブ。
小さなケーキを買って沙也加の部屋を訪ねた。


「金沢？！ そんな遠くに？ 期間はどのくらいなの？」

哀しそうな瞳を向ける。愛おしくて衝動的に抱き寄せた。