1章:① BAR『YOU』 (2/2)

森の奥に、緑と赤のカラフルなテントが設営された。まるで小さなサーカス小屋のようだ。


毎年、森のどこかに現れるのだが、次の年に行こうと探しても、なかなか見つからない。


しかし人生に迷い、生きがいを見失ったひとは不思議とめぐり合うことができるのだ。


すきとおるような肌と、紅いくちびるを持つ、ママの“ユウ”。


それは時として、人生のタイミングのように、ポンと肩を押してくれる一夜になる。


◇◇◇


今年もまた“ユウママ”は、腰までとどく亜麻色(あまいろ)の髪を黒いリボンで束ね、錫(すず)板に『YOU』と彫りこみを入れた、小さな看板をテントの入口に吊るした。


雪がちらちらと、亜麻色の髪に舞いおりる。