成人式は出ないつもりだった。

会いたい人も居なければ
笑いながら懐かしめる思い出もない。


成人式の前日、
クラスメイトだった男子から電話が来た。
もちろん、家の電話だ。

「久しぶり！元気だった？
俺、遠藤だけど。」

『あぁ、久しぶり。』

「明日の同窓会なんだけどさ」

まるで仲が良かった友達同士みたいな
明るくて親しみやすい口調だった。

『行かないよ。欠席で。』

「え？何でよ！？
久しぶりだし、会いたいぢゃん！」

ｱﾀｼには分かってた。
また笑い者にしたいだけなんだという事。

その証拠に電話の向こうから
複数の男子の笑い声が聞こえる。
クスクスと笑う、嫌な感じのものだ。

無理矢理に電話を切ると、
またすぐに掛かってきた。

３度続いて、ｱﾀｼは仕方なく頷いた。
『顔だけ出すよ…。』



行ったら…みんなに再会したら…
何か変われるだろうか。

ずっと引っ掛かってたものは
無くなるだろうか。

でも、向き合わなきゃいけないと思った。

遠い高校へ行き、家出して
２年ほど地元から離れて暮らし
ｱﾀｼはずっと逃げてきた。

何か変われるとすれば
明日は良いチャンスかもしれない。


だけど、その日の夜は
怖くて怖くて眠れずに過ごした。