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10章:自由のある生活
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10章:自由のある生活
母にお尻をつねられた一件から、私は学園という言葉を人前で発しない様、七歳なりに気を付けていた。
母に嫌われたら捨てられる。
怖かった。
想えば、学園にいた頃から私はそうだった。
大人の顔色を伺う癖がついていたのだ。
学園では、親代わりである先生方だが、子供一人につき一人の親代わりが居たわけではない。
女子寮では八人の子供に対し、一人の先生がいた。
まだまだ甘えたい低学年の子供達は、個人差さえあれど、いかにして自分を一番に見てもらうか、という節が皆あった様に思う。
そうして私は母に上手く甘えるようになった。
夜はせっかくの一人部屋なのに、なかなか寝付けなくて隣の母の部屋に行き、小学二年になるというのに母の布団の中で寝た。
学園にいた頃は、寝付けないなんて我慢するしかなかった。
みんな我慢してたから。
その反動だったのか、毎晩母の部屋を訪ねて一緒に寝たのだ。
姉に気付かれないように…。
姉は気付いていたのだろうか?
今もわからない。
ただ、1ヶ月、2ヶ月と母と3人で暮らすうちに、私は姉が母に素直になれないことに気付いていた。
それを良いことに私は母にさんざん甘えていたのだ。
新しい小学校に転入し、幼かったせいか私は直ぐに周りに溶け込んだ。
学園を出て、母に甘えるようになり、性格まで変わったのか、内気な私はもういなかった。
学園では6時起床だったのに、私は一緒に登校していた友人が8時に迎えに来るまで惰眠を貪る毎日になっていた。
朝の掃除だってしなくて良い。
おやつも好きなだけ食べる事が出来たし、毎晩の正座で反省会も無かった。
放課後、友達と好きなだけ遊べた。
自由だった。
母はあまり家に居なくて淋しかったが、首から下げた鍵が自分自身を大人になったように錯覚した。
※学園では、毎日全員にお菓子タッパーが配られ、それぞれの年齢に合わせた量のお菓子が決まっていた。
ハッピーターンが2つ。歌舞伎揚げが1つ。キャンディーが2粒。サイコロチョコレートが2粒。といった具合だ。
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