ホスト,キャバ,風俗等のちょっと大人の無料ケータイ小説!PC,スマホ、ガラケー全対応!

6章:Op.②-5 すっぽん (19/19)

それから新は付け人に、衣装の袖を後ろからたぐらせて、手にも白粉を塗る。衣装や鬘を白粉で汚さぬよう最後に塗るのが、歌舞伎俳優のスタッフに対する礼儀である。


一幕の「光源氏」が終幕し、急いで口上の裃袴に衣装替えだ。


すっくと立ち、腰に美希の白扇を刺した。


「若旦那! 舞台に板付(幕が開く前から舞台上に居ること)をお願いします!」


スタッフから声が掛かり、ふらつきそうになる身体を立て直し、明るく声を返す。


「はい! 宜しくお願いします!」


◇◇◇

口上は……自分の順番が来るまで、居並ぶ諸先輩俳優の祝辞を平身低頭したまま、十分以上聞いている。


ーー身体に流れる血は頭へと下がり、新の鼓動は割れんばかりの音を立てていた。

気力を振り絞り、眼の前の白扇を見ていた。彼女がそこに居るようで……新は心静かに“その時”を待つ。


「ーー今後は生涯をかけて精進し、この名跡を継いで、名乗らせて戴く責任を全うしていきたいと思い……」


(客席が揺れている……いや、暗い……?……ああ、何も見えなくなっちまった……)


命の限りと、言い切った。


「責任を全うしていきたいと思っておりまする!」


そのまま頭を、三つ指をついた舞台に伏せた。


チョチョンチョチョン……



柝の音が遠くで聞こえーー眼はもう見えず……指でそろそろと白扇を探る。


(冥土への道行(みちゆき)はお前と一緒だ……約束通り、添い遂げような……美希)



99 /311

※この小説を友だちに教える⇒メール

いいね LINEで送る

Toy box ©著者:七斗

夜のケータイ小説サイト「ホスラブ小説」
PC,スマホ、ガラケーで全ての機能が利用できます!

Copyright © hostlove.com All Rights Reserved.