病院に着き病室に案内された。


そこは外来の診察室の隣室だった…



隣室といっても入り口が別なだけで、奥は繋がっているので、先生や看護士さんの会話、先生と患者さんの会話などよく聞こえてくる…


亜里紗がベットで寝かされ点滴を打たれた部屋は、しきり一枚隔てた所にもう一つベットがあった…


点滴が始まって一時間程したら、お腹の大きな妊婦さんが入ってきた…



看護士さんがその妊婦さんに
「分娩控え室の空きが出来たら直ぐに移るようにしますからね」
と言っていた…


亜里紗はこれから子供を堕ろす…


片やしきり一枚隔てた隣りにいる女性は、これから子供を産む…


病院側の事情もあるだろうけど、何も隣り合わせにしなくてもいいのに…と思った…



その妊婦さんの旦那さんらしき男性も遅れて入ってきた…

ドラムバックを持っている。
おそらく今日入院するのだろう…



お腹にエコーをあてて赤ちゃんの心音を確認したりしている…


亜里紗はずっと目を瞑っていたが、起きているのは分かっていた…


私も自分の時を思い出す…


時折聞こえてくる赤ちゃんの泣き声に、耳を塞ぎたかった記憶がある…


私は亜里紗が不憫で堪らなかった…


まさか私の娘が同じ思いをするなんて…


私は涙が出そうになるのを何とかこらえていた…