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23章:雲行き
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23章:雲行き
それから数日が過ぎ、私はパン出庫に行っても周りを気にしないようにし、仕事だけに集中するようにしていた。
久美子「最近石田さん見かけないんだよね…まあ社員さんだから、日曜日出勤して平日休みを取ってるんだろうけど…」
私「きっとそうだよ」
久美子が今まで仕入れた石田さん情報は
①25才独身
②会社の寮住み
③横浜出身
④勤務時間
早番4:00〜13:00
遅番6:00〜15:00
よく調べたものだ…
ある日の勤務日に、社員の中村さんに
「今内線でオーダーのチョコ出来たって連絡あったから、佐藤さんか清水さん、どちらか取りに行って」と言われた。
久美子はベーカリー以外興味ない…
私「行って来ます!」
チョコを取りに行くだけなので台車は押さすに向かった。
チョコ工場へ行くにはベーカリーの前を通る…
テクテク歩いてると帽子を深めに被った見覚えのある目付きの男性が…
〈わぁ〜、石田さんだ…相変わらず恐っ!〉
私は目を合わせないように軽く会釈だけして通り過ぎた…
「ねぇ!」
すれ違って直ぐに呼び止められた…
私「はい?」
石田さん「何処行くの?」
私「オーダーのチョコレートを取りに…」
石田さん「こっちもオーダーのくるみパン出来てるよ」
私「台車で来てないんで、チョコレート置いてきてからまた取りに来ます」
〈丁度いいや、久美子に取りに行かせよ〉
石田さん「そう…」
チョコレートをもらい、伝票を受け取り歩いていた。
ベーカリーの前を通った時に石田さんが立っていた…
石田さん「持って行ってやるよ」
私「でも悪いんで…」
石田さん「いいから」
〈石田さん、なんか緊張するなぁ…〉
長い廊下を歩きながら石田さんが話しかけてきた。
「佐藤さんて結婚してるんだって?」
私「あ〜、はい…」
石田さん「子供二人居るんでしょ。見えないよね…」
〈何でそんな情報知ってんのよ(汗)〉
エレベーターの前に着いた。まだ上の階にある…
〈私もなんか話さなきゃ…〉
私「石田さんて損してますよね…」
〈ゲッ、こんな事言うつもりなかったのに…〉
石田さん「佐藤さんて俺の事嫌いでしょ」
私「いえ、恐いだけです…」
石田さん「言うねぇ(笑)」
『チーン!』
エレベーターがきた…
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