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1章:神村 理の場合
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んも〜
今、私は搾乳されている。
これが意外に気持ちよい。
どこまでも広がる青い空。
空気は綺麗で、ストレスのない毎日。
乳牛に生まれてきてよかった。
好きな時に草を食べ、好きな時に昼寝をする、そんなノンビリした生活に満足していた。
ん?
誰か客人が来ているな。
んも〜
あれ?
どこかで見た事ある人間だぞ?
んも〜
「ねぇ、あの牛こっち見てない?」
男の方は知らん顔だ。
「昔ね、死んだ旦那とも牧場きた事があるんだ。」
女が何か話している。
何だ。
近くで見ると、ただのオバサンじゃないか。
「その旦那って言うのが、何考えてるのかサッパリ分からないヤツで、突然プレゼントくれたり、いきなりどこかに連れてくのよ?
私の都合も聴かずに。」
いい年したオバサンが若い男連れて・・・このオバサンの息子なのか?
「でもさ、その旦那が急に死んで初めは驚いたけど、保険かけといて良かったわ。
やっぱり何かあった時の保険だもんね。」
清々しい顔して、オバサンは笑っている。
そりゃそうだろう。
こんな空気が美味しい、素晴らしいところに来ているのだから・・・
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(幽)輪廻 ©著者:まっきー
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