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11章:喪失
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「しかし被害者のお嬢さんのミス・山岸の強い要望により、我がホーチミン警察署では特別にこの遺体を一週間お預かりする事とする。変死体用の冷蔵庫を使用するのは極めて異例だが、私が許可した。我々からは以上だ」
それだけを言うと、グエン少佐はミドリの方をチラリと見て僅かに目配せをした
拓馬からはそれが
(これでいいか?)
と少佐がミドリに確認している様に見えた
グエン少佐が部下に命じ、山岸の遺体が載せられた寝台と共に出て行ってしまうと、進藤が声を上げる
「由香里さん、これはどういう事だね?遺体が返らない事には葬儀も出来ない。非業の死を遂げたお父さんの遺体を早く日本に帰してあげなければ。お父さんの死には我々も責任を感じているが、一週間の時間稼ぎは何か意味があるのだろうか?」
それに対し、由香里は顔を真っ直ぐ上げて宣言する
「その一週間、私はミドリさんの事務所に犯人の調査を依頼しました。父の遺体と一緒に帰り、日本で葬儀を行うのは、一週間後にします」
由香里は一旦言葉を切ると、一同を見渡す様にしてさらに続けて言う
「ミドリさんはその一週間で父をあんな目にあわせた人間を必ず特定すると約束してくれました。私はそれを信じます!」
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浮遊する言霊 ©著者:黒蝶少年
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