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3章:①-3 Othello(オセロ) (2/17)

言葉が飛鳥を一瞬にして縛り、鼓動が胸で弾ける。


「……だから……何や言うんですか?」

怯んだ自分に対応出来ず、男を探る様な眼つきで値踏みするしか無かった。


「あ、いやほら! 俺、職場がこの近くなんですよ。ここのカフェも常連で。それで、この間もたまたま通りかかって……騒動に遭遇して」

人懐っこい表情は、やっと探し物を見付けた仔犬の嬉しそうな顔そのもので、嫌味が無かった。


白のポロシャツにノーブランドのジーンズを履いた、そんなどこにでもいる普通の男だ。


「……あんな無茶をしてはいけないよ」


心まで透かして見通す瞳に、カッと血が登り白い肌に紅が差した。

(何なん? こいつ!)


「なんでそんな親戚みたいなこと言われなあかんのですか?!」

男は眼を円くして――爆笑した。

「アハハハ! 『素直は敵!』なの?」

「そんな――戦意高揚の標語みたいな言い方しないでください!」


「とにかく! あのご夫婦からの伝言を伝えたかったんだよ。それぐらい聞いて?」


誠実な表情が眩しい。念を押すようにぽつりぽつりと語り始める。


「お孫さんに会いに行く途中だったそうだ。あなたと同じくらいの年の、女性のお孫さんでね。一瞬『孫が助けてくれたのか』って思ったって。とても感謝していると言ってたよ。あの後、俺も救急車に付き添ったんだ」

「あ……そうだったんですか。ご迷惑を……」


構えていた力が抜けた。自分はあのままそそくさと現場を後にしたのだ。
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白いスーツの妖精〜Miri再び ©著者:七斗

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