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2章:①-2 A Midsummer Night's Dream(夏の夜の夢) (21/21)

(表彰なんかいらんわ。名前聞かれて住所聞かれて――過去が全部解ってしまうし、仕事出来んようになるわ)

そのまま列を離れ、Uターンして出口に歩いた。


(ここにはもう来られへんな。せっかくの憩いの場やったのに……髪も他の色にせんと)


早足で店を出た時だった。カフェに入ろうとした男とすれ違うーーやにわに振り返りシトラスの香りが飛鳥を浸す。


「あ、無謀ちゃん!」


――あの、タオルを差し出した男が飛鳥の腕を優しく掴んだ。


「あ、良かった。ここに来たらいつか会えるかとーー探してたんですよ!」

「……何の話ですか」

「この間の無謀なひとですよね?」

男は優しい眼差しを向けているが、飛鳥は動揺した。


「何の話だか……人違いです」

「あはは!マスクしてたって。その独特の眼でバレてますよ」


爽やかな声が飛鳥の耳をくすぐるーーが、肩を空かして手を振り払った。


「ちょっと! 気軽に触らんといてよ。離してください! どんな眼やと言うんですか!」


往来は丁度ランチタイムで、財布だけ持ったOL達が、談笑しながら通り過ぎて行く。開放感のある穏やかなざわめきが、無機質なオフィス街を演出し、二人の時間だけが止まっていた。



「――この世に、自分独りだけしか生きてないって眼です」


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白いスーツの妖精〜Miri再び ©著者:七斗

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