7章:Fairness 〜 公平さ (20/20)

◇◇◇

『ピンポン！』

チャイムが鳴った。

聖はベッドから重い身体を起こして玄関に向かう。

――美蔓から電話があった。労災の件で彩香を向かわせたと言う。断る訳にはいかなかった。仕方が無い。

部屋には上げず、玄関で書類を書いて帰ってもらおう。

ゆっくりドアを開ける。


◇◇◇

彩香はチャイムを鳴らした。

ゆっくりドアが開き、狂おしいほど会いたかった聖の顔が見えた。玄関を開けるとキッチン、そしてその奥が毎週通って愛を育んだあの部屋ーー



――フェルメールは、少女が誰かに気付いて振り返った一瞬を捉えようとしたのであろう。

苺を連想させる艶やかな唇。

「オランダのモナ・リザ」と言われる絵画『真珠の耳飾りの少女』を彷彿とさせる女性が、奥の部屋から振り返った。



『タカラさんは歴史と思い出の中にいます』

『心配しなくても、すべての人に公平になるように天が采配し、物事は収まるところに収まっていきますよ』



頭の中にMiriの言葉がさまよう。





――沙奈がそこに居た。