1章:鳶職人・聖(たから) (13/13)

だがしかし聖は真剣に――紛れも無く沙奈を愛していた。


【お前しかダメなんだ。お前だけだ】

【ずっと俺の側にいてくれな。今日は楽しかったよ】

【お前と一緒になりたい。命懸けで愛している】


彩香には一度も告げた事も無い、愛の叫びが送信済みフォルダに残り、そして沙奈も聖を純粋なまでに想っていた。

想ってはいたが、年の差を気遣い自ら身を引いた。


【聖の年齢に相応しい女の子と幸せになって。今までありがとう。私は聖に愛されて幸せだった。これからは、聖が幸せになることだけを楽しみにしている】


二台目の携帯受信メールはそこで終わりになり、その後にメールアドレスを変えたのであろう沙奈へのメールがエラー表示で戻ってきていた。

……The original message was received at Tue, 27 Mar 18:08:01 +0900
from [173.24.65.000]

----- The following addresses had permanent fatal errors -----
<sana@mzweb.ne.jp>
(reason: 550 <sana@mzweb.ne.jp>: User unknown)

----- Transcript of session follows ----【俺は沙奈をずっとずっと待っているから】-----




丁度2年前に……届かなかった聖の悲鳴が――彩香の理性を奈落の底へと堕として行った。