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1章:第一章
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「ちょっと待って下さい。僕の意志はどうなるんです?」
「おい、直之っ!」
父親が慌てて僕の肩を掴んだ。
「それはどういう意味ですかな?」
上津の父君はむっとした表情で僕を睨んだ。
僕はその目を怯む事なく見返すと、はっきりと自分の心中を伝えた。
「足を運んで頂き申し訳ありませんが、このお話はお受け出来ません。僕は一生独身で通すと決めているんです」
「パパっ!工務店が相手ならどうにでもなるんじゃなかったのっ?!」
優奈お嬢さんは父君に泣きついている。
父君は頭から湯気を立てる勢いで僕に怒鳴った。
「それなら、何故、見合いを受けたっ!!」
「皆さんの前でキチンと説明しないと分かって頂けないと思ったからですよ。家の父も親戚も誰も僕の話など聞いてくれませんでしたから。もし、理由もなく見合いをお断りしても、そちらも納得されなかったでしょうし」
「うう.....む」
父君は一声唸り黙ってしまった。
「何故、結婚しないか教えてよっ!」
優奈お嬢さんの問いに僕は正直に答えた。
「一生愛すると誓った人が逝ってしまったからですよ。僕はもう誰も愛せない」
「この馬鹿がっ!」
父親の言葉を最後にその場は静まり返った。
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