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82章:花子と貞子
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82章:花子と貞子
タカヒロ『つーかお前、足組むなよ。みえんだろ。』
私の耳元でそう呟くと自分の上着を私の膝の上に羽織らせた。
そして再びシンさんとお酒をのみながら笑っていた。
仲の良い仲間にでもやきもちをやくのだろうか。
少し可愛いなと思いながらマルのふざけた歌を聞いていた。
私『ちょっとお手洗い行ってくるね!』
タカヒロ『ついてくよ。』
私『大丈夫。すぐ戻ってくるから♪』
だいぶお酒も入りお手洗いも近くなる。私は少し千鳥足になりながら部屋を出た。
そこのカラオケは室外に部屋がある。自分たちの部屋を出ると中庭となっていて冷たい空気の中微かに潮風の匂いがした。
お正月だというのにお客は殆どいない。 古い建物には二階もあるがどの部屋も真っ暗で使用されているのかわからないほどだ。
お手洗いはずっと先に向かった薄暗い中庭の一角にある。
古びた木の板を渡り真っ暗なトイレを見た瞬間ゾワーっと鳥肌がたった。
私はタカヒロを連れてくれば良かったと後悔し、一度部屋に戻ろうとも思ったのだがパーティールームは一番先にあり距離がある。
我慢出来なくなる事を考えると諦め1人で入る事にした。
ドアを開けると、【キィー】っと不気味な音が響きジメジメとした狭い空間にツンとカビの臭いがする。
電気のスイッチを探しONにすると想像よりも明るいライトがついた。
2つある個室の左側に入ると用を済ませ終わったその時だった。
コン… コン…
誰かがノックをしている。しかし、女子トイレに他の客や店員が入ってきた形跡もない。ましてやもし入って来たとしてもドアを開ける音で気付くはずだ。
コン… コン…
私は硬直したまま自分の気配を消した。 そのノックはドアからではない。隣の個室から聞こえるのだ。
勿論、私以外に人はいない。
最悪。そう思いながらポケットから携帯を取り出しタカヒロに電話をした。
しかし出てくれない。思い返せば彼の携帯は私のバックの中にあるのだ。気付くはずがない。
最悪…
そう思いながら恐る恐る鍵を開け逃げ出そうとした。
しかし…鍵が開かない。
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赤いカーテン ©著者:姫
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