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57章:一人と一匹
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57章:一人と一匹
亮の家を出て半年が経過した。
一人の生活にもだいぶ慣れはじめ私は仕事につく事が出来た。
それは家から30分ほどの小さな建築会社で、社長から書類を受け取るとそれを家に持ち帰りパソコンに入力する。
時々事務所で作業をし営業について行く事も多々あった。
体が弱い私にはありがたい仕事だった。
社長はまだ若いが気難しい不器用な人。しかしとても筋の通ってる真面目な人だった。
従業員は3人、メガネをかけいかにもインテリ風な斉藤さん。真面目で出来過ぎ君タイプだ。
もう一人は要さん。おとなしい性格だが意外と毒舌。
そして最後に野平さん。剽軽で威風堂々としたやんちゃタイプ。何時も社長と行動を共にしてるシングルファーザーだ。
亮は時々気まぐれに連絡をくれる。
亮【元気にやってるか?風邪ひくなよ。】
亮【明日NYに出張に行く。ユーリは元気か?】
亮【味噌汁ってどうやって作るんだ?】
きっと寂しいのだろう。私は気が向いた時に返信をする程度にしていた。
そして…タカヒロとユウキからも何度か電話やメールが入っていた…。
ユウキ【亮さんから聞きました…美月ちゃん。大丈夫?またいつか笑顔で会える日を楽しみにしてます。】
私はユウキに謝りとお礼のメールを送信した。しかし…タカヒロには何て言ったらいいのか…
タカヒロ【落ち着いたらでいいから連絡下さい。】
結局、彼には返信をする行為はしなかった。
一人と一匹であの家で生活を始めた今、孤独を選び誰も傷つけない自由を自ら選んでいたからだ。
食事をするのも一人。テレビを見るのも一人。寝るのも一人。そんな生活に孤独を感じなくなっていた…。
しかし、時々夢に亮が出て来る。するとその日の朝は一人枕を濡らしている。
広いベットに彼はいない。声を出し泣いてしまえば後はすっきりした気持ちで家事をこなし仕事をする。
私はこのまま孤独死するのだ。
そんな生き方も悪く無い。
素敵な思い出がある限り生きて行ける。そう思っていた…
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赤いカーテン ©著者:姫
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