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11章:懐かしき姿
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11章:懐かしき姿
新しい環境にもなれはじめ、亮との都内暮らしが当たり前になってきた頃…私は妙な噂を耳にした。
仕事を終えたかれが珍しく早く帰宅した時のことだった。
亮『ただいま。』
私『お帰り。』
少し元気の無い彼に不信感を抱いたまま、彼の上着をハンガーにかけると私は夜ご飯の支度に戻った。
私『お風呂、入ってきたら?』
亮『あぁ…』
私『何かあった?』
亮『いや…何でもない。』
そう言って彼はバスルームへと向かった。
二人で夕食を食べている時、彼はやっと口を開いたのだ。
亮『なぁ…』
私『どうしたの?』
亮『お前の友達の、あの子いるだろ?わがままなあの子だよ。』
私『どの子?』
亮『俺らが初めて会った日にいたあの子だよ。』
私『あぁ直美?彼女がどうしたの?』
亮『まだ付き合いはあるのか?』
亮は直美のことをあまり良く思っていなかった。わがままで自己中な女を好かない彼に、私は直美とのことやタケとの間のことは伏せていた。
タケが私に好意を抱いていた事実を話してしまったら、二人の間に隙間を開けてしまうと思ったからだ。亮は異常なまでの独占欲があった。だから、言わなかったんだ。
私『何となく…あれから疎遠になってしまったよ。もうずっとも連絡してないな。』
亮『そうか…』
私『何故?』
亮『実は…』
今日、取引先に向かう途中で見かけたんだ。ガリガリに痩せてて髪もボサボサで…ホームレスみたいな姿だった。
声かけようと思ったんだけど…そんな雰囲気じゃなかったんだ。少し気になったからさ…お前のダチだから。
私『そう…』
亮『もしかして、あの時が原因なんじゃないかって。』
私『まさか…』
亮『タケから聞いたんだ。あの日以来、パニック症候群みたいになってストーカーまでされたらしい。結局、突き放したらしいけどな…そんな子じゃなかったんだろ?』
私『うん…私も一方的に文句言われてから疎遠になってたから。』
亮『文句言われる要素お前にないだろ?』
私『うん…まぁ…』
亮『タケも言ってたんだ。あの日以来、様子おかしいって。気になったから…それだけだ。』
私『見かけたの、どこで?』
亮『渋谷の街中。』
私『そっか…』
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赤いカーテン ©著者:姫
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