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53章:扉(前)②
私「…はい?」
まさか呼ばれると思わなかったので、キョトンとしてしまう。
藤木「ちょっと来てくれる?」
私に背を向けて座っていた藤木さんが、振り向いて言ってくる。
私「えーっと…」
お父さんは丁度こちらを向いている角度に座っているので、その顔色を窺う。
…と、うわ。何だか少し青い顔してる。
私「あの、私ちょっと――」
藤木「大事な話があるんだよ」
有無を言わせないような口調に、少しカチンとくる。
女の子を誘うなら、もっと優しく言いなさいよね。
お父さん、ちょっとどうにかして…と思い、再び父親を見ると、首を横に振っている。
無視して行け、ってことだ。
でも、そんなのって何だか失礼で…
藤木「ね、ほら…」
…とか思って躊躇していると、藤木さんが椅子から立ち上がる。
藤木「良い子だから、こっちに…」
気持ち悪い口調。ギラギラした目。
ヤダ、この人。生理的に受け付けない――
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