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6章:崩壊への序曲
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母の呪縛から解放され、東京で平穏な日々を過ごした。
「アンタは働かなくていい。その代わり、家の事を頼む」
相馬の就職先は叔父の経営する工場だった。
そこで厚待遇を受けていた為に生活には困らなかった。
相馬の言葉を守り、家事に専念した。
前ほどの贅沢は許されなかったがそれでも生活に不自由はなかった。
田舎の母の安否は気になったものの、連絡する気にはなれずにそのまま年月を重ねた。
そして互いに二十歳を迎えた時、婚姻届を提出し、正式に夫婦となったのだ。
「子供はもう少し生活が落ち着いてからにしよう」
相馬はそう言った。
今までだって生活に不自由した事なく、貯金だってしている。
十分落ち着いているはずなのに…
疑問はあったものの、きっと相馬は慎重になっているのだと思い、素直に頷いた。
入籍してから3年が経ったある日、身体に不調を覚え、病院に行ってみると医師から妊娠を告げられた。
予想外の妊娠であったものの、これをいい機会とした。
日々せり出してくるお腹に誓った。
私は母とは違う。
この子の自主性をきちんと考えられ、正しき判断を下せる理想の母になろうと。
母の二の舞にだけはなってはならないと。
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雲路の果て ©著者:ゆえ
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