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4章:依存
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屋上には誰一人居らず、話をするにはもってこいの場所であった。
それもそのはず。
普段は立ち入り禁止の場所なのだ。
「…先生の許可なくこんなところに入って…見つかったら大変よ」
「じゃあ、アンタはあのままクラス中の注目を集めながら話とやらをしたかったのか?」
相馬はそう言うとフェンスに寄り掛かりながら私を見つめた。
ぐうの音もでない。
確かにあの場所で話をするのは気後れする。
「…で?話って何?」
相馬から切り出され、覚悟を決めると頭を下げた。
「今回の件、本当にごめんなさい。私の不注意でもあるのに母が騒ぎ立てて、迷惑をかけてしまったわ」
「あ?何だ、そんな事か。こっちが悪いんだ。気にしないでくれ。それよりも腕は大丈夫なのか?」
呆気なく許されて面を食らった。
「腕は大丈夫よ。そんな事より貴方とその御家族に迷惑をかけてしまった事のほうが…」
「気にするなと言ったのが聞こえなかったのか?いいと言ったら本当にいいんだ。何度も同じ事を言わせないでくれ」
容赦ない相馬の言葉に思わず呆然とした。
すると相馬は困ったように頭を掻くと口を開いた。
「…悪い。どうやら言い過ぎてしまったみたいだな。俺は言葉がキツいとよく言われるんだ。直さないといけないんだがな。とにかくこの間の件は本当に気にしないでくれ」
相馬が言い終えると同時にチャイムが鳴り響いた。
「…そろそろ行かないとまずいんじゃないか?」
「ええ。相馬君は?」
「俺のクラスは次は自習。もう少しここでゆっくりしていくさ」
相馬に一礼をすると踵を返した。
扉に手をかけようとした時に“ねぇ”と、呼び止められ、手が止まった。
「アンタさ…何でいつも空ばかり見てるの?」
途端に鼓動が早くなっていくのがわかった。
見ていたの?
しばらく考えたのちに顔を上げ、相馬を見つめ返した。
「…空を自由に泳ぐ雲が羨ましかったから。それだけよ」
相馬の返答を待たずして屋上をあとにした。
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雲路の果て ©著者:ゆえ
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