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2章:操り人形
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「十和田、今日はもう終わりだ。帰りなさい」
不意に先生から楽譜と閉じられ、鍵盤を叩く手が止まった。
「そんな…もう少しだけいいですか?今、凄く乗れてるんです」
先生はため息混じりに首を横に振った。
「駄目だ。先程、親御さんから職員室に電話があった。今すぐに帰りなさい」
また親が…
“わかりました”と呟くと、他の部員達を他所に帰り支度を始めた。
「…相変わらず凄いね。十和田さんのお母さん」
「ねー。ちょっとでも女神の帰りが遅いと即電話だもんね」
「いやー、それにしても美しいなぁ…女神様は」
「本当に。流石は我がピアノ部の女神様♪ついつい見とれちゃうよね。でも絶対に手を出しちゃ駄目よ?もしお母さんにバレたら…」
「ヤダヤダッ!想像するだけでも怖ぁい♪」
部員達の嘲笑に気を止める事なく“お先に失礼します”と告げ、部室をあとにした。
帰宅途中、学校帰りのクラスメイトと遭遇した。
「あっ!女神♪今、帰りなの?私達クレープ食べに行くんだけど、一緒にどう?」
「ありがとう。でもママが早く帰ってこいって言うからまた今度ね」
クラスメイト達は“そっかぁ〜”と残念そうな声を出した。
「それにしても、女神は本当にスタイルいいよね♪羨ましいなぁ」
クラスメイトの一人がそんな事を呟いた。
「…私は貴女達が羨ましいわ」
思わず口に出た。
私みたいなスタイルになりたいなら自由を奪われればいいだけ。
私だって貴女達みたいに部活に専念したり、学校帰りに買い食いしたいしたい。
クラスメイト達と別れ、家路に急ぐ。
ふと、信号待ちの最中に空を見上げた。
空には見事な鱗雲が掛かっていた。
この空を自由に泳ぐ雲になりたい。
そんな夢見事を考えていた。
母が居る限り叶わないとわかりつつも。
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雲路の果て ©著者:ゆえ
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