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1章:夜想曲 (3/3)

沈黙をややあって樹里が破った。


「…美優さんには親戚が居ないと聞いていましたが」


「…そうね。うちの両親は離婚をしているの。母に引き取られたから、父には中学生の時から会ってないわ。母とは18歳の時に家を飛び出したっきり。どうやら父が母の件を知らせる為に興信所を使ったみたいなのよ。驚いたわ」


樹里は少し困ったような顔をしながら私を見つめた。


聞いていいのかどうか悩んでいるのだろう。


いいのよ、樹里。


貴女にだったら何でも包み隠さず話すわ。


「そういえば、コウはどうしているのかしら?」


「部屋で勉強してます」


「そう…あの子もテストが近いものね。主人との約束通り、頑張ってもらわないとね」


樹里に妊娠が発覚した時、佐賀に帰ろうとする樹里をコウが引き留め、うちに連れ帰ってきた。


冬月は当然の事ながらはじめは反対していたが、懸命の説得の結果、大学に進学をし、常に上位の成績を維持する事を条件に樹里を嫁として受け入れた。


そして樹里にはコウが大学を卒業し、自立するまではうちに住み、家事や子育てに専念する事を約束させたのだ。


あれからもう二年もの月日が流れた。


母親は子供の傍に居て、子供を守る。


冬月の子供の教育方針は未だに変わってはいない。


それは私と冬月が出会った頃から。


理想の夫だ。


「あの…」


不意に樹里から呼び掛けられ、顔を上げた。


「…大丈夫ですか?いくら絶縁状態とはいえ、親の訃報はつらいものです」


思わず胸が高鳴った。


何て可愛らしいの。


私を心配するその顔…


とても素敵よ。


「…樹里?もう眠いかしら?」


「いえ、大丈夫です」


「少し…お話に付き合ってちょうだい」


「はい、勿論です」


樹里が即答すると、私は立ち上がりワインクーラーへ向かった。


「…赤でいいかしら?」


「はい」


そうして私は樹里を相手に紐解いた。


封じられた数十年前の記憶を。

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雲路の果て ©著者:ゆえ

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