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1章:夜想曲 (2/3)

思わずため息をつき、テーブルの上に手紙を放った。


深夜の静まり返ったリビングで一人、猫足ソファに座りながら物思いにふけっていると遠慮がちにその扉が開かれた。


扉の方向を見て、思わず頬が弛んだ。


「…美優さん、まだ起きていたんですか?」


樹里が心配そうにこちらを見ていたのだ。


「ええ、ちょっとね…貴女はこんな時間にどうしたの?」


「トイレに起きたんですが、リビングの明かりが点いていたので」


「そう…こっちにいらっしゃい」


そう言い、手を差し伸べると樹里は迷う事なく、私の目の前に来た。


シルクの前開きのナイティに黒のカシミヤのカーディガンを羽織った樹里は少年のような凛々しさと色気を醸し出していた。


何度見ても美しいわ…


樹里はカーディガンを脱ぐと私の双肩にかけた。


「美優さん、そんな薄手のネグリジェだけだと風邪をひいてしまいます」


樹里の体温を感じ、胸が熱くなった。


「樹里は本当に優しいわね」


平静を装いながらカーディガンを手繰り寄せる。


「…それは?」


ふと、樹里がテーブルの上の手紙の存在に気が付いた。


「ああ、それ…」


深呼吸をすると、樹里に手紙を手渡した。


「…父からの手紙よ。母が亡くなったんですって」


リビングが静寂に包まれた。

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雲路の果て ©著者:ゆえ

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