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15章:本編5③
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15章:本編5③
「そして、その地に帰ってきた子孫たちを守り続けてきた宮司の祖霊は、悪しきものの侵入に気づき、警告を発する。
それが春先から始まる幽霊事件だ。思い出して欲しい。
わたしはこの場にいる全員にそれぞれの幽霊との遭遇譚を訊いた。
その中で一人、たった一人だけ、他の人と異なる遭遇の仕方をしていた。誰だか分かるか」
気がつくと、ざわざわとした気配が僕の周囲からは離れていた。その神主の霊たちはある一箇所に集まり始めている。
「襲われているんだ。その人物だけが」
ハッとした。
僕……?
なんだか分からないが、目の前が真っ暗になりそうだった。
師匠が僕の表情に気づいたかのように苦笑する。
「おまえのは、ただ通り道だったというだけだ。明け六つが始まるから、出て行こうとしたんだよ。その進行方向に座っていたというただの不運だ」
そうか。そう言えば、なんというか、害意のようなものは感じなかった。
では、その人物とはもう一人しかいないじゃないか。
「ひぃぃ」
泣き声のような悲鳴が上がる。和雄だ。和雄が呻きながら目の前の空間を手で払う仕草をしている。
その周囲には無数の影が蠢いている。まるで群がるように。
「おまえだけだよ。追いかけられているのは」
和雄の姿を見ながら、冷たい声で師匠はそう言った。
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