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4章:本編1⑤ (1/7)

4章:本編1⑤

「祖父はあの年代の人にしては凄く押し出しの立派な人でしたから」

今の自分よりも背が高かったんですよと、頭の上に手をやってみせた。

なるほど。
そんな大柄な人なら、たとえ顔がぼやけていようが、幽霊になって現れたらそれと分かりそうなものだ。

女将や旅館の人々も、先代の宮司を良く知っているだろう。

誰もそのことに触れないということは、どうやら和雄の祖父が化けて出ているわけではないようだ。

もっと昔のご先祖様ということか。

「最近、神職の服が盗まれたりってことはない?」

師匠の問い掛けに和雄は眉をひそめる。

「誰かが、イタズラでもしてるってことですか」

「まあ、どんなことでも可能性はあるから」

自分自身、幽霊を目撃したという和雄からすると、それが誰かのイタズラだと言われても納得できないだろう。

確かにこれまでに聞いた多くの目撃談からしても、すべて人間の仕業というのは無理がある気がする。

「服が盗まれたことなんてありませんよ。もちろん紛失もありません」

和雄がはっきりそう言うと、師匠は「そう」と言ってそれ以上追求しなかった。
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未 ©著者:hare

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