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4章:本編1⑤
「祖父はあの年代の人にしては凄く押し出しの立派な人でしたから」
今の自分よりも背が高かったんですよと、頭の上に手をやってみせた。
なるほど。
そんな大柄な人なら、たとえ顔がぼやけていようが、幽霊になって現れたらそれと分かりそうなものだ。
女将や旅館の人々も、先代の宮司を良く知っているだろう。
誰もそのことに触れないということは、どうやら和雄の祖父が化けて出ているわけではないようだ。
もっと昔のご先祖様ということか。
「最近、神職の服が盗まれたりってことはない?」
師匠の問い掛けに和雄は眉をひそめる。
「誰かが、イタズラでもしてるってことですか」
「まあ、どんなことでも可能性はあるから」
自分自身、幽霊を目撃したという和雄からすると、それが誰かのイタズラだと言われても納得できないだろう。
確かにこれまでに聞いた多くの目撃談からしても、すべて人間の仕業というのは無理がある気がする。
「服が盗まれたことなんてありませんよ。もちろん紛失もありません」
和雄がはっきりそう言うと、師匠は「そう」と言ってそれ以上追求しなかった。
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