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4章:本編1⑤
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「え〜。うちの『とかの』のあたりの方がバス停遠いじゃん。たまにはそのくらい歩きなよ」
そんなことを話しながらしばらくそこで景色を見ていると、陽が翳ってきて寒さが身体に戻ってきた。
風も少し出てきたようだ。
「もう少し先が頂上ですけど」
と和雄が尋ねたが、師匠は首を振って
「もういいや。戻ろう」と言った。
頂上までの道はここから少し下った後でまた登りになっていたが、そのすべてがすでに見渡せた。
女将の言っていたとおり、裏山には神社やそれに関するものは全く見当たらなかった。
頂上の反対側の下りも同じようになにもないと、楓と和雄が断言した。
師匠はそれほど残念そうでもなく、
また先陣を切って元来た道を下り始めた楓の後ろについて、山道を踏みしめていった。
五分ほど歩いただろうか。
右手側に大きくV字形に抉れた谷が広がっている場所に出たのだが、そこで師匠が足を止めた。
谷の方へ身を乗り出して首を伸ばしている。先はかなり急な崖だ。
後ろにいた僕は思わず「何をする気ですか」と止めに入りそうになった。
師匠はキョロキョロと周囲に目をやると、手がかりとなる木がまばらに生えた獣道を見つけ、
そこから崖の下へ降り始めた。
止める間もなかった。
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