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4章:本編1⑤
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「あ、この先から見えますよ」
楓が指さした先には木々の群れがぽっかり抜けたような空間があった。
その開けた所まで登りきると、遠くの景色が見渡せた。
「見晴らしがいいなあ」
師匠が手近な切り株に片足をかけた。
眼下には枯れ木で覆われた山の峰が広がっている。
それほど高くは登っていないはずだが、角度のせいかここからは『とかの』は見えない。
その代わり、平野を隔てた遠くの山の中腹になにかの建物が見えた。
「あれが、うちの神社ですよ」
和雄が指をさす。
「こうして見ると、結構近いな」
「でも『とかの』から歩いたら一時間近くかかりますよ」
見下ろす風景の中には畑や田んぼ、そして枯れ木ばかりの林など、寂しい色彩ばかりが広がっている。
その間を縫うように、枝川がくねくねと蛇のようにうねりながら伸びていた。
「なにもないところでしょう。だんだん人口も減ってますし。
うちの神社のあたりなんて今じゃバス停も遠くになっちゃって、不便でしょうがないですよ。
家族全員バイクに乗ってるくらいです」
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