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2章:本編1②
微笑んだ後で頭を下げる姿は流れるようで、いかにも身についた仕草という感じがした。
四十年配の女将は続けて「依頼をした戸叶(とかの)です」と名乗った。
師匠が名刺入れを出したので、僕も慌ててポケットを探る。
興信所の所長は僕らバイトにも名刺を作ってくれていた。
ただし、大きな声では言えないのだが、偽名だ。バレやしないかといつも不安になる。
女将も懐から名刺を出してお互いに交換した。
「よろしくお願いします」
特に名刺の名前に疑惑を持った風もなく、女将はにこやかに
「まずお部屋へどうぞ」と片手を広げた。
ロビーを回り込むように抜けると、先へ伸びる廊下と階段があり、僕らは二階に案内された。
本来師匠が一人でやってくるはずのところを、急きょ僕も助手としてついていくことになったので、
部屋が二人分用意されているのか不安だったが、並びで二つきちんとかまえられていた。
和室の中に通されると、思ったより広く、家族連れなどのグループ客が使う四,五人用の部屋のようだった。
こんなことろを一人で使うのは申し訳ない気分になる。
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