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11章:呪いの本
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11章:呪いの本
高1の冬頃の事だったと思う。
その日A宅に行くと、家の主はソファに体を横たえて本を読んでいた。
俺は人並み程度には本を読むが、Aは時折昔の作家の全集を開くくらいだ。
何の本を読んでいるのか気になりタイトルを尋ねると
「呪いの本」
なんて答えが返ってきた。
「読んだら死ぬってか?」
好奇心と呆れ混じりに訊くと、Aはニヤニヤと笑いながらこちらに顔を向ける。
相変わらずどこに焦点を置いているか分からない目。
「死にはしない。けど、お前が読んだら寿命縮むんじゃない?」
そう言ってぱたりと本を閉じる。
見ればその本は装丁こそ立派であるもののさして厚くもなく、表題すらも書かれていない。
Aがああ言った以上、もとよりまともな本ではないのだが、それがますます怪しくなってきた。
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