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17章:「結」⑨
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17章:「結」⑨
「あの子は、母親を殺さなかった。殺す夢を見ても、殺さなかった。最後まで、殺
されるまで、殺さなかった。ギリギリのところで、そんな選択をした。わたした
ちが、この街の人たちが、こうして静かな夜の中にいられるのもそのおかげだ」
目に映る住宅街の明かりはほとんどなく、目に映るすべてが夏の夜の底に眠って
いる。
「ここに来るべきじゃなかった。そんな警告すら、あの子はしていたような気がす
る。もう終わったことだ。招かれざる侵入者は。目を閉じて去るべきだ」
キャップの下の真剣な目がそっと伏せられた。
警告。そうか、あのコーンや道路標識はそのためなのか。
ではあの、カラスとヒトがくっついたような不気味な生き物は?
誰もその答えは持っていなかった。分からない。分からないことだらけだ。私は自
分の住む世界のすぐそばで、目を凝らしても見えない奇妙なものたちが蠢いている
ことを認めざるを得ないのだろうか。
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