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14章:「結」⑥
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14章:「結」⑥
私は夜空を仰ぎ、月の光に照らされたビルの影を探す。
この街で一番高い影だ。
そして月がそのビルに半分隠れるような視点を求めて、息を殺しながら自転車をゆ
っくりと進める。
動くものは誰もいない。ほとんどの家が寝静まって明かりも漏れていない。様々な
形の屋根が、黒々とした威容を四方に広げている。
やがて私は背の低い垣根の前に行き着いた。街にぽっかりと開いた穴のような空間。
向こうには銀色の街灯が見える。遮蔽物のない場所を選んで通るのか、風が強くな
った気がする。
公園だ。
私は胸の中に渦巻き始めた言いようのない予感とともに、自転車を入り口にとめ、
スタンドを下ろしてから公園の中に足を踏み入れた。
靴を柔らかく押し返す土の感触。銀色の光に暗く浮かび上がる遊具たち。見上げて
も月はビルに隠れていない。ここではない。けれど今、私の視線の先には、街灯の
下に立つ二つの人影があるのだ。
ごくり、と口の中のわずかな水分を飲み込む。
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