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9章:恋人 (6/6)

樹里は目を見開いて僕を見つめた。


その表情から僕の発言が予想外であった事がわかった。


「…付き合う?私と幸一郎君が?」


「そう、いつまでもこんな関係なのは良くないよ」


樹里は明らかに困惑の表情を浮かべた。


それはきっと年の差からくるものだろう。


僕は話を続けた。


「僕はアンタが好きだ。アンタもそうだろ?だったらいいじゃないか。関係付けをはっきりさせよう」


樹里の瞳はみるみるうちに涙が溢れ、やがて流れ出た。


また涙…!


平静を装いながらも心の中は焦りに焦っていた。


どうも女性が泣く姿は苦手だ。


「…だって、私と幸一郎君は12歳も離れてるんだよ?」


「知ってるよ。それでも構わないから言ってるんじゃないか」


そう言い、樹里の小さめな口唇にキスをすると抱き締めた。


「もう一度言うよ。僕達、ちゃんと付き合おう」


すると樹里は観念したかのように息を漏らし、頷いた。


「…本当は幸一郎君の誕生日プレゼントはこの指輪をあげたかったの。でも、幸一郎君の同級生達と遭遇した時に何だか年の差を感じちゃって…」


そういう事だったのか。
あの時、樹里が曇り顔だった理由がようやくわかった。


そしてプレゼントが腕時計だった理由も。


「…本当に私でいいの?」


「何度も言わせないでよ。アンタがいいんだ」


そう言って頭を撫でると樹里は再び泣き始めた。


ああ、また…
仕方ない。こうなればもう一回。


僕は再び、ティラノザウルスの物真似をした。


樹里が泣き止むように。


こうして僕と樹里は恋人になった。

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愛証 ©著者:ゆえ

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