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10章:葛藤 (3/6)

樹里の休みの日、映画を観た僕達は夕飯で近くのイタリアンレストランに入った。


パスタを堪能したあとにデザートを食べて、先程観た映画の感想に花を咲かせていた。


「…ちょっとトイレ」


そう言い、席を立つとトイレに向かった。


トイレの扉を開けた瞬間、僕は固まった。


目の前は真っ暗な空間が広がっていたのだ。


ここは…一体…


上か下かもわからない果てしなく広がる無音の空間。


扉が自動的に閉まった。


「こんにちは」


暗闇の中から突如、声が聴こえ僕は飛び上がった。


振り返るとそこにはあのチワワが居た。


暗闇の中のはずなのにチワワだけははっきりと見えた。


「アンタは…」


「幸せそうで何より。君も彼女も」


チワワはこの間とは違い、何やら独特な威圧感を放っていた。


そういえば…僕が今に戻れたのはこのチワワのお陰なのか?


そう聞こうとしたと同時にチワワが口を開いた。


「残された時間を大切に使う事ね」


……!!


「何だよ…それ」


思わず声が上擦った。


するとチワワは真ん丸な目で僕を見つめ、淡々と告げた。


「…君は何やら頑張っているみたいだけど、所詮運命は変わらないって事」


僕とチワワの間に沈黙が流れた。

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愛証 ©著者:ゆえ

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