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8章:ペアリング
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「幸一郎君、これ…」
いよいよ樹里の手から紙袋が手渡された。
「マジですか?ありがとうございます」
四年前の僕もこう言った。
「気に入ってくれればいいんだけど」
はにかむ樹里に再度お礼を言うと紙袋を開けた。
中にはきっとあの小箱が入っているに違いない。
そう期待を膨らませながら…
…え?
紙袋を開けた僕は思わず固まった。
中に入っていたのはあの小箱ではなく、四年前に贈られた腕時計の箱だったのだ。
「…幸一郎君?」
不思議そうな顔をしながら僕の顔色を窺う樹里に生返事をしながら箱を開けた。
中に入っていたのはやっぱり腕時計だった。
何で?
ちゃんと深野達の前でアンタは大切な人だって公言しただろ?
「お〜い、幸一郎君?」
郷さんに呼ばれ、ようやく我に返った。
樹里は俯き加減だった。
どうやら僕がプレゼントを気に入らなかったと思ったらしい。
それは郷さんも同様で気まずそうに樹里を横目で見たあとに視線を僕に移した。
『例え、気に入らなくても喜ぶべきだろ!』
郷さんの目は明らかにそう告げていた。
…ていうか!
僕はこの腕時計は気に入ってたんだ!
これじゃあ、まるで僕が空気の読めない人みたいじゃないか。
慌てて樹里のほうに向き直ると大袈裟に喜んでみせた。
「樹里さん!ありがとうございます♪これ、前から欲しかったんですよ!」
「本当に?幸一郎君、何も言わないから気に入らなかったのかと思った」
激しくかぶりと振ると腕時計をはめてみせた。
「いや、欲しかったものがまんまと手に入ったから、どうしてわかったのかなって考え込んでただけですよ♪」
そう力説すると樹里は満足げに微笑んだ。
その樹里を見ながら郷さんも一安心の表情を見せた。
何でなんだ…
僕の失言がなかったわけだし、アクセサリーが欲しいとも言ったのに。
ペアリングを渡す事に何の支障もないはずだろ?
この間の深野達の件にしろ、合点がいかない事続きだ。
まさか運命を変える事は出来ないのか?
いや、そんなはずはない。
きっとこれはたまたまそうであっただけだ。
よし、見てろよ…
樹里に笑顔を向けつつも、頭の中である計画を立てた。
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